頚椎(けいつい)と腰椎(腰椎)とは
頚椎とは人間の柱ともいえる背骨にある骨のうち、首にあたる骨を指します。
一般的に背骨と言われますが、整形外科の領域では脊柱(せきちゅう)と呼ばれ、首から腰までつながった骨の集合体と言えます。
脊柱は首に該当する頚椎、胸に該当する胸椎、腰に該当する腰椎の大きく3つに分かれています。
更に頚椎は7つの骨で構成されており、頭を支える、頭、腕を動かす、といった役目の他に、中に通っている脊髄を守るという重要な役目も担っています。
脊髄は人間の四肢を動かすためになくてはならない神経ということもあり、頚椎に何らかの障害(変性)が出ると、四肢に影響を及ぼします。
一方、腰椎はいわゆる腰にあたる部分で5つの骨で構成されています。
脊柱の中では最も大きい骨と言え、中には馬尾と呼ばれる神経が通っています。
馬尾は最終的に脳につながっているため、腰椎に何らかの障害(変性)が起こると、主には下肢に影響が出てきます。
ここでは頚椎や腰椎の変性によっておこる主な疾患の一例を説明していきます。
むち打ち症や寝違えなどの頚椎捻挫
主に交通事故などによるむち打ち症や寝違えといったことが原因で首が痛む、あるいは動かないという症状があり、レントゲン写真などの画像検査で異常所見がない場合、頚椎捻挫と診断されます。
むち打ち症とは、自動車に乗車している際に追突・衝突・急停車が起きた、もしくはスポーツの最中に首に不自然な力が加わるなどして、首が鞭のようにしなってしまうことで、首回りがダメージを受けている状態を言います。
また寝違えは、睡眠中に無理な姿勢を無意識的にとった際に首の筋肉に負担をかけたことで、筋肉痛のような症状が出ている状態です。
あまりにも痛みが激しくて、首が回らないこともあります。
同症状につきましては、安静にしておくか、消炎鎮痛剤などを使用していくことで、数日で痛みが軽減することが大半です。
ただ痛みが一週間以上続いているのであれば、頸椎椎間板ヘルニアなど他の病気が原因ということも考えられます。
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎(首の部分)にある椎間板が加齢をはじめ、負担のかかる姿勢や運動、あるいは外傷によって一部が変性し、それによって椎間板から髄核が脱出、これが脊髄や神経根を圧迫するなどして痛みなどの症状が現れている状態が頚椎椎間板ヘルニアです。
30~50歳の世代でよく起きるとされ、第5頚椎と第6頸椎の間が最も変性しやすくなります。
主な症状は、首や肩の痛みやこりといったものですが、変性した椎間板や骨棘によって脊髄が圧迫されていると上肢(肩関節から手指までの部分)や下肢(股関節から足指までの部分)に痙性麻痺が、また神経根が圧迫されていると片側の上肢に疼痛がみられるほか、感覚障害や運動障害も伴うようになります。
頚椎症
頸椎の椎間板が主に加齢によって変性、あるいは長年に渡って続く首の酷使などが原因で起きるとされる疾患です。
上記のような原因で椎間板が狭小化することで発症します。
脊髄が圧迫されていると頚椎症性脊髄症、神経根が圧迫されると頚椎症性神経根症と診断されます。
よく見受けられる症状は首の痛みやこりといった頚部痛や頚部の可動域の制限といったものですが、頚椎症性脊髄症になると手足の痙性麻痺がみられるほか、排尿・排便の異常(膀胱直腸障害)がみられることもあります。
また頚椎症性神経根症では、圧迫を受けている神経根に一致する手(上肢)に疼痛やしびれが見受けられるようになります。
多くは保存療法(薬物療法、装具療法)による治療で軽快するようになりますが、日常生活に支障をきたすほど重症な場合は手術療法となります。
腰部脊柱管狭窄症
主に加齢により椎間を支える靭帯の肥厚が原因とされ、それによって脊柱管が狭窄し、様々な症状が現れている状態を腰部脊柱管狭窄症と言います。
50歳以上の方が発症するとされ、一口に脊柱管の狭窄と言いましても馬尾神経が圧迫されている場合と神経根が圧迫されている場合で症状が異なります。
馬尾神経では、両方の下肢や会陰部にしびれや灼熱感などがみられ、膀胱直腸障害が起きるようになります。
また神経根の場合は、お尻の片側や下肢で疼痛がみられるようになります。
どちらのタイプであったとしても最も特徴的なのは、間欠跛行です。
これは、長時間歩行すると足の痛みやしびれで歩けなくなるのですが、少し休むとまた歩けるようになります。これを繰り返している状態を言います。
なお、比較的若い世代の方でも重労働や重いものを持つなどの職業で腰部などを酷使、何かしらの原因で腰を痛めたということで発症することもあります。